「鳴く虫のしぜん教室」
案内人:島村政美先生(日本鳴く虫保存会)
おはようございます。ご紹介いただいた島村政美です。
私の所属する団体は、2年前のしぜん教室で上小のみなさんにお会いしたときには、「鳴く虫友の会」という名前でした。その後会員数が200名くらいとなり、全国的な組織になってきたので、昨年「日本鳴く虫保存会」に名前が変わりました。
この会のはじまりは、日本で始めてカンタンの孵化に成功した「小野公男」さんが作られた「多摩邯鄲(かんたん)保存の会」がはじまりです。カンタンは、一番いい声で鳴く虫だと言われており、この会でもいちばんだいじにしている虫です。(デパートでは2000円くらいするそうですよ)
◆秋の虫について
虫にまつわることわざについては、「虫が好かない」「虫の知らせ」とか、いやなものが多いのですが、秋の虫はとてもいい声で鳴きますね。スズムシなど、秋の虫はみな昆虫です。昆虫ってどんな虫か、知っていますか?
@頭・むね・しりがあり
A触覚が2本ある
この2つの特ちょうをもつものを昆虫といいます。
昆虫は「卵→幼虫→さなぎ→成虫」というように姿を変えます。これを「変態」といいますが、鈴虫をふくむコオロギ類はさなぎにならずに「卵→幼虫→成虫」と姿を変えます。これを「不完全変態」といいます。
ところで6月4日を「虫の日」というのですが、たしかにスズムシは6月4日ごろに孵化して、約2ヶ月で成虫になり、その後約2ヶ月生きます。「スズムシは虫の日に生まれ、その寿命は4ヶ月」これはおぼえておきましょう。
◆コオロギ類とキリギリス類
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秋の鳴く虫はコオロギ類とキリギリス類に分けられますが、どこがちがうか、というお話をしましょう。セミはおなかで鳴きますが、これらの虫はどこで鳴くのか知っていますか? そう、はねです。はねで鳴くときに、コオロギ類は(上から見て)右ばねが上に、キリギリス類は左ばねが上になります。 どっちがどっちだったっけ?と言う人のためにとっておきの「おぼえ方」をお教えしましょう。 右、という漢字の左半分を消してみます。どうです、カタカナの「コ」という字があるでしょう。 左、という漢字の左半分を消してみたら、カタカナの「エ」という字がありますが、たての棒をちょいとのばせば、ほら、「キ」の字になりました。 「コ」オロギは右のはねが上、「キ」リギリスは左のはねが上。ほら、これでもう覚えられましたね! |
◆虫が鳴くわけ
さて、虫はなぜ鳴くのでしょうか。(なかまを呼ぶため、メスを呼ぶためといった声)
そう、メスを呼ぶためです。だから鳴きばねを持っているのはオスだけです。虫が鳴くわけはもう一つあります。それは自分の縄張りを他のオスに知らせるためです。メスとオスを見分けるには、卵を産むため産卵管があるのがメスとおぼえましょう。
|◆鳴く虫の産卵ほか
スズムシは土の中に、マツムシは枯れた植物の茎に産卵します。
ガチャガチャと鳴くクツワムシは4〜5cmもある大きな虫ですが、土の中に産卵して1cmくらいの卵を産みます。
スイッチョンと鳴くウマオイは、畑にいるのと林にいるのとでは鳴き方がちがいます。
ウマオイは肉食ですが、キリギリスも肉食なので、うっかり手を出すとガブリとやられますので注意しましょう。
◆ここで島村先生に質問!
Q肉食でない虫が共食いするのはなぜですか?
→せまいいれものにたくさんの虫をかうことが原因になります。特に交尾したあとのメスは獰猛(どうもう)で、相手のオスを食べてしまうこともあります。
Qエサが足りないと共食いするのですか?
→これは、何とか生きようとする虫の本能なのです。
Q最高で、何ヶ月生きますか?
→クツワムシを翌年2月まで生かしたことはありますが、まる1年生かすのは無理です。
Q虫のコミュニケーションは触覚(しょっかく)でとるのですか?
→その通りです。特にコオロギ類は夜行性なので、触覚が目の代わりにもなります。
Q触覚が1本になったり無くなったりするとどうなりますか?
→飼育なら、えさがすぐ近くにあるので生きられますが、野生ではすぐ死んでしまうでしょう。触角は虫の命と考えていいですね。
◆日本で増えている虫と減っている虫
日本の鳴く虫でふえているのはカンタンとアオマツムシ、へっているのはクツワムシとマツムシです。カンタンとアオマツムシは何百メートルも飛べるので、住んでいる木が切られても次の木に移動できます。アオマツムシは外来の虫ですが、最近特に増えています。クツワムシとマツムシは飛べないので、草を取られたらそこで絶滅してしまいます。
●●●●●● このあと島村先生がさつえいされた鳴く虫のスライドをたくさん見せていただきました。●●●●●●
◆最後に島村先生に質問!
Qアオマツムシとマツムシの違いを教えてください。
→アオマツムシは緑でマツムシは茶色です。アオマツムシは木の上に住んでいてマツムシは地面から30cmくらいまでのところにすんでいます。アオマツムシは空を飛べるがマツムシは飛べません。だからアオマツムシはふえているのにマツムシはへっていると先ほどお話したとおりです。
Qずっとはねをこすり合わせていると、つかれないの?
→つかれないみたいですよ。カンタンは1時間も鳴きます。鳴くのはオスの本能的な仕事です。
Qどんなえさを食べますか?
→ヤブキリ、キリギリス、ウマオイは肉食なので、虫などを与えます。
コオロギ類はみな雑食なので、きゅうりやなすを食べます。
Q先生は世界中の鳴く虫を知っていますか?
→世界中の鳴く虫までは知りません。日本だけでも280種類いますので、知らない虫もいます。ただ泣き声を聞けばまず、だいたいは当てられます。
「原っぱでの虫取り」
そのあと午後2時から学校のすぐ近くにあるしばふ原っぱで、虫取りを行いました。
まだ暑いさかりの時間、鳴く虫たちの鳴き声はさすがに聞かれませんでしたが、オンブバッタやコオロギ、ウスバキトンボ、カマキリなどがたくさんとれました。
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普段は入れない原っぱですが、今回地主さんに特別に許可をいただき、虫取りをさせていただけることになりました。 |
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そのようすからオンブバッタとよばれるショウリョウバッタです。 エサとなるイネ科の植物が豊富にあるためか、たくさんいました。 |
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ショウリョウバッタもカマキリもとれたよ。 |
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遅い夏を惜しむかのように、ウスバキトンボもたくさんとんでいました。 |