「石神井川のお話」講義内容要旨(H12.9.23)

案内人:土屋信之さん(しぜん探検隊)

それでは、午前中にみんなでセルビンを仕掛けてきた、石神井川のお話をしましょう。



石神井川にはどんな生き物がいるの?

今日は朝から、教室の右側に水そうが置いてあります。
練馬区役所で、夏休みに「みずべの生き物展」をしていましたが、このとき出展されていた石神井川の生き物たちをもらってきて、水槽に入れてあります。古田島先生と松田先生が何日か前にセルビンでほかくしたヨシノボリやスジエビも入っていますよ。
あとでまた見てくださいね。

5年前から流域の役所で水生生物調査をしており、今日の資料のなかに、練馬区内の石神井川で確認された水生生物をのせてあります。
お魚では12種類あります。今日の水槽に入っているモツゴは川の中〜下層に、ドジョウやコイは川底の方に、ヨリノボリは川底の石の下にいる魚です。
昨年度の調査結果を見ると、魚の中では、モツゴ(クチボソ)とヨシノボリが出現している個体数も場所も多いので代表的なものとなっています。
この二種類の魚が多いことには理由があり、どちらも汚れたところでも生きられる、水草がなくても産卵できる、卵から産まれるまでオスが保護し守る、この3つの点で他の魚より繁殖が有利なためなのです。

ところで橋の上から見ると、ときどき大きなコイが泳いでいるのを見かけます。
これは、川の水が少しきれいになってきた約15年前(昭和59年と61年)に、魚が生きられるかどうかを確認するために約1000匹ほどのコイを練馬区が放流したものです。
今では、きれいな水のところにしかいないアブラハヤやプラナリアなども住めるほどになりました。

ところで、同じ都内の川でも、神田川では毎年アユが見つかっていますが、石神井川にアユはいません。これはどうしてでしょうか?
石神井川も神田川も、水の汚れ方は大して変わらないのですが、石神井川はその終点である隅田川との合流地点近くに、大きな「落差口」というものがあり、アユが上流にのぼること(溯上(そじょう)といいます)をさまたげてしまっているのです。

川によっては、魚が溯上しやすいように、落差のあるところにすべて魚道(ぎょどう)を設けているところもあるので、石神井川にもこのような工夫が必要だと思います。
また雨が降った時に濁流に流されないための逃げ場となる深み(淵)や入り江(ワンド)の整備がされないと魚が増えていくことはできないのです。

水が汚れるってどういうことなの?

水の汚れとはなんでしょうか。

生活排水の中の有機物を一般的に汚れといっていますが、他にもそれじたいの存在で魚がすむことができないほどの問題となるシアン、重金属などの有害物質や農薬による汚染もあります。

水の有機物の汚れをはかるものさしに、BOD(生物化学的酸素要求量)とかCOD(化学的酸素要求量)といったものがあります。
ここに、CODの値を調べる水質検査パックがありますので、これを使ってひとつ実験をしてみましょう。

ー問題ー

「さっき石神井川からとってきた水」と、「コップ1杯の水道水にお醤油1滴をたらした水」とでは、いきものにとってどちらがきたない水でしょうか?
(実際にパックテストでCODの値を調べる)

答えは、お醤油1滴をたらした水でした。例えば、スプーン1杯のしょうゆを薄めて生き物が住めるようにするためには、お風呂の浴槽1.5杯分の水が必要なんですよ。
ふだん台所などから流しているものが、もしそのまま川に流れ込んだら、どんなに川を汚すことになるか、これでわかってもらえると思います。

水の汚れ(有機物)と生きもの

配ってある資料の中にBODの昭和46年からの経年変化をあらわしたグラフがあります。

ふつう魚がすむことができるのは5mg/lの濃度といいます。今の石神井川は通常3〜5mg/lですから、7年前くらいから魚がすめるような水質になってきたことがわかりますね。
ふつう家庭排水などいっさい入ってこない川では1mg/l程度だといわれています。こういうところではヤマメなどが棲めるわけです。

ちょっと難しいのですが、家庭排水は植物プランクトンにとって栄養となる物質を含んでいることから、適量の有機物のときには、小さい珪藻やそれを食べるカゲロウなどの昆虫が増え、さらにそれを餌として食べる魚も増えます。
しかし、有機物の量がさらに増え、バクテリアが水の中の酸素を使いその有機物をバラバラにする能力、つまり川を自分できれいにする能力をこえてしまうと富栄養化といい、水中の酸素もすくなくなって、住むことのできる魚や生きものの種類が急に減ります。

みなさんにお配りした資料では、川の水を次の4つの階級に分けています。
水質階級1:きれいな水
水質階級2:少しきたない水(まあまあきれいな水といってもいいでしょう)
水質階級3:きたない水
水質階級4:大変きたない水

石神井川には、最初にきれいな水(水質階級1)のウズムシ(プラナリア)1種、まあまあきれいな水(水質階級2)のスジエビ、ヒラタドロムシ(幼虫)の2種、きたない水(水質階級3)のミズムシ、オイカワ、ヒル(シマイシビル)、コサギ、タニシの5種、大変きたない水(水質階級4)のザリガニ、サカマキガイ、ユスリカの幼虫の3種がいます。

ですからこの種類数から見れば、石神井川は、きたない水(水質階級3)程度であることがわかります。きたない水(水質階級3)でもどちらかというと、大変きたない水(水質階級4)に近いということも分かるかと思います。
下水道の普及により、石神井川は以前に比べてだいぶきれいになったといわれていますが、これをみると必ずしもそうとは言い切れないところがありますね。

また下水道があるといっても、大雨のときは川が汚れます。これは、水の量が増えて下水処理場で処理しきれなくなると、川に汚水が流れ込む「越流(えつりゅう)」というものが起きる構造になっているからです。

石神井川はどんなところなの?(スライド)

それではスライドを見ながら、石神井川を上流からたどってみましょう。

(1)最上流
小平市の鈴木小学校というところのあたりが、石神井川の源流だったところといわれています。今から約1万2千年前(旧石器時代)にここは昔の人の水汲み場だったと考えられていて、世界最古の石斧も発掘されているんですよ。

(2)小金井カントリークラブ内
このゴルフ場のなかに、現在の源流があるといわれていますが、今の源水の量はひじょうに少ないので、残念ながら近くにある日立電子の工場排水が、源水を補っているようです。

(3)嘉悦女子短大前
ここで初めて石神井川の流れが見られます。緑に囲まれ、水もきれいですね。

(4)小平市内
このあたりでは川の汚れが目立ちます。生活排水がまだ流れ込んでいるのが見えます。

(5)田無市内、保谷市内
田無市内では洪水対策用にあふれた水が流れ込む5つの池が作られています。ふだんは水が無く、運動公園になっています。このあたりはずっと川の底も横もコンクリートに囲まれていて、殺風景になっていますね。またこれでは地下水も湧き出てこれません。

(6)富士見池横
ここから練馬区です。武蔵関公園の富士見池は、石神井川の水があふれたときに水が流れ込むようにできていますが、実際に水が流れ込んだのは過去1年間で3回くらい(台風と雷雨のとき)です。
去年、きれいな水のところに住むプラナリアが見つかったのもこの辺りです。
去年から今年にかけて、富士見池の水を抜いて底をきれいにする工事が行われましたが、池の底はすべてコンクリートに覆われています。ところどころに穴が空いていますが、これは地下水が湧き出てこれるようになっているのです。

(7)武蔵関駅周辺から
練馬区内に入ると平常時は汚水と雨水が分断され、雨水だけが川に流れ込むので、水はきれいです。
オオカナダモなどの水草が豊富で、コサギがドジョウやザリガニ取りをする姿も見られます。

(8)三宝寺池南側付近
地下水が湧き出るポイントが多く、東京都の「絶滅危急種」といわれるナガエミクリという水草も生えています。
ナガエミクリはトンボ池の水源のところにも移植されていますよ。
去年、石神井川では初めて、きれいな冷たい水に住むアブラハヤがこの辺りで確認され、今年の6月には、しぜん探検隊が群遊して産卵している状況を確認し、役所、研究機関等に報告しています。

(9)南田中付近
親水施設が整備され、水もきれいですが、川底が浅くて生物の種類が少ないようにも思えます。

(11)さらに上流にかけて
場所によっては、魚がすみやすくなるように魚巣ブロックや、遡上のための魚道また植物を生えさせるための砂利の岸などを設けているところもあります。これからの生き物にやさしい川づくりをしていくための試みだそうです。

(12)終点
石神井川の終点は、隅田川との合流地点です。これでスライドの説明を終わります。

雨も少し小降りになってきたようなので、みんなで仕掛けたセルビンを上げにいきましょう。